「図面に書かれた三角の記号、これってどういう意味なんだろう…」と戸惑った経験はありませんか。
また、「加工先にどのくらいの仕上げを指示すれば良いのか、いつも迷ってしまう」と感じている方もいるかもしれません。
面粗度の記号は、製品の品質やコストを左右する大切な情報です。
しかし、その意味を正しく理解すれば、設計や加工の現場でのやり取りが格段にスムーズになるでしょう。
この記事では、設計や製造の現場で面粗度の記号に初めて触れる方に向けて、
– 面粗度とは何かという基本的な考え方
– 図面で使われる記号の種類とその読み取り方
– 適切な面粗度を指示するためのポイント
上記について、解説しています。
専門的な内容もできるだけ分かりやすく説明しているので、知識に自信がない方もご安心ください。
この記事を最後まで読めば、図面の指示を正確に理解し、自信を持って業務に取り組めるようになります。
ぜひ参考にしてください。
表面粗さの基本と必要性
表面粗さが求められる理由
製品の設計図面になぜ表面粗さの指示が必要かというと、部品が持つべき機能や性能を確実に保証するためなのです。
例えば、自動車のエンジンのように部品同士が高速で摺動する箇所では、表面が滑らかでないと摩擦や摩耗が激しくなり、焼き付きといった重大なトラブルを引き起こしかねません。
適切な面粗度に仕上げることで、機械は円滑に作動し、製品寿命も延びることでしょう。
また、気体や液体を密封するOリングなどが接する面も、その滑らかさが性能を左右します。
表面に凹凸が残っていると、微細な隙間から漏れが発生する原因となるのです。
さらに、塗装やめっきの仕上がり具合や、製品の外観品質といった見た目の美しさにも、表面粗さは大きく影響を与えます。
このように、機能性や信頼性を確保する上で、面粗度の管理は極めて重要な工程といえるでしょう。
表面粗さが製品に与える影響
表面粗さは、単なる見た目の美しさだけでなく、製品の性能や寿命を左右する極めて重要な要素です。
例えば、エンジン内部のピストンリングのように互いに摺動する部品では、表面が粗いと摩擦が増大し、摩耗が早く進んでしまうでしょう。
また、表面の微細な凹凸は応力集中の起点となり、繰り返し荷重がかかる部品の疲労強度を低下させる原因にもなります。
さらに、流体や気体を扱う配管の接合部やシリンダーヘッドのガスケット面では、適切な粗さに仕上げないと気密性や液密性を確保できず、漏れを引き起こすことにつながるのです。
このように、表面粗さの管理は機械部品の信頼性を保証するために不可欠であり、その製品に求められる機能に応じて精密にコントロールされなければなりません。
面粗度の種類と記号の理解
代表的な面粗度の種類
面粗度を評価するには、目的に応じて複数の指標が用いられます。
その中で最も広く採用されているのが「算術平均粗さ(Ra)」というパラメータでしょう。
これは、粗さ曲線の中心線からのズレを平均した値で、表面全体の滑らかさを数値化する際に基準となる指標です。
一方、局所的な傷や突起が問題となる箇所では、「最大高さ(Ry)」が重要視されることも少なくありません。
このRyは、測定範囲内における最も高い山の頂点と最も深い谷の底との高低差を示します。
さらに、「十点平均粗さ(Rz)」は、基準長さから最も高い5つの山と最も低い5つの谷を選び出し、それらの平均高さの差を算出したものです。
Raよりも突発的な凹凸の影響を反映しやすいため、特定の機能面で利用されるケースがあります。
これらのパラメータはJIS B 0601:2013などで明確に定義されています。
面粗度記号の意味と使用方法
図面で用いられる面粗度記号は、JIS B 0031の規格に基づき、表面の仕上げ状態を正確に伝達する重要な役割を担います。
この記号は、チェックマークのような基本形状に様々な情報を付加して使用されるものです。
例えば、記号の上部には算術平均粗さを示す「Ra 1.6」といったパラメータ値や上限・下限値を記入し、右横には研削加工を示す「G」のような加工方法を指定します。
また、記号の下側には、加工によってできる筋目の方向を指示する記号(例:「=」は平行、「X」は交差)を配置することが可能です。
さらに、記号自体の形状にも意味があり、基本記号に横線を追加したものは除去加工が必要なことを示し、円を付け加えたものは圧延肌など除去加工を禁止する場合に用いられます。
これらの記号を正しく読み解き、適切に使い分けることが、品質管理の精度を高める第一歩となるでしょう。
面粗度の測定と計算方法
算術平均粗さRaの計算方法
面粗度の評価において、最も広く利用されるパラメータが算術平均粗さ(Ra)です。
これは、JIS B 0601:2013で定められており、粗さ曲線からその中心線の方向に基準長さだけを抜き出し、中心線から測定曲線までの高さ(偏差)の絶対値をすべて足し合わせ、その平均値を算出したものとなります。
言葉だけでは少し難しいかもしれませんが、凹凸のある表面の山部分を削り取り、その土で谷を埋めて平らにならした時の、平均的な高さだとイメージすると分かりやすいでしょう。
計算式上では、基準長さLの区間内で粗さ曲線の偏差の絶対値を積分し、基準長さLで割ることで求められます。
このRaは、表面全体の粗さを平均的に評価するため、一部にある突発的なキズやバリなどの影響を受けにくく、安定した数値を得やすいという大きなメリットを持っています。
そのため、製品の品質管理において非常に重要な指標として、多くの図面で採用されているのです。
最大高さRyの測定手順
最大高さRyとは、粗さ曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最も高い山の頂点と最も深い谷の底との高低差を指し示します。
この測定は、部品表面にある単独の傷や突起、あるいはシール性といった機能面を評価する際に非常に重要となるでしょう。
具体的な測定手順として、まず触針式表面粗さ測定機などを用いて、評価したい表面の基準長さをサンプリングすることから始めます。
次に、そのサンプリングした範囲内で最も高いプロファイルピーク(山の頂)と、最も低いプロファイルバレー(谷の底)を特定しなければなりません。
そして、これら二点間の垂直方向の距離をマイクロメートル(μm)単位で測定した値がRyとなるのです。
なお、JIS B 0601:2001以降の規格では、旧JISのRyは最大高さ粗さRzとして定義が更新されているため、図面の発行年式や規格を確認することが求められます。
十点平均粗さRzの計算手順
十点平均粗さRzの計算手順は、規格の変遷を理解することが重要です。
一般的に知られる「十点平均粗さ」とは、旧JIS規格(例:JIS B 0601-1994)で定められたものであり、現在ではRzjisと表記されるケースが多く見られます。
まず、測定した粗さ曲線から基準長さの部分を抜き取ります。
次に、その範囲内で平均線から最も高い山を5つ選び、その高さの平均値(Yp)を算出してください。
同様に、最も低い谷を5つ選び、その深さの平均値(Yv)を求めましょう。
最後に、この山の平均値Ypと谷の平均値Yv(絶対値)を足し合わせた数値が、十点平均粗さRzjisの値となります。
この算出方法は、突発的な傷やノイズの影響を平均化するため、安定した評価が得られやすいという利点がありました。
なお、現在のJIS B 0601-2013ではRzは「最大高さ粗さ」を指すため、図面を確認する際はどの規格に基づいているか注意を払う必要があります。
表面粗さの測定機器と技術
表面粗さの測定に使用する機器
表面粗さを測定する機器には、大きく分けて「接触式」と「非接触式」の2種類が存在します。
最も広く用いられているのが、ダイヤモンド製の触針(スタイラス)で直接表面をなぞって凹凸を読み取る「触針式表面粗さ測定機」でしょう。
ミツトヨの「サーフテスト SJシリーズ」などが代表例で、JIS B 0651に準拠した信頼性の高い測定が可能です。
一方、対象物に触れずに測定するのが非接触式測定器となります。
キーエンスのワンショット3D形状測定機「VRシリーズ」のようなレーザー顕微鏡や白色干渉計は、光を利用して瞬時に広範囲の3D形状を捉えることを得意とします。
これにより、製品を傷つける心配がなく、柔らかい素材や微細な電子部品の測定にも適応できるのです。
さらにナノレベルの分解能を求める場合は、原子間力顕微鏡(AFM)が使用されることもあります。
最新の測定技術とその特徴
近年の表面粗さ測定技術は、非接触方式へと大きく進化しました。
代表格が、光の干渉を利用する「白色干渉計」やレーザー光を用いる「共焦点レーザー顕微鏡」でしょう。
これらの技術は、従来の触針式と異なり測定対象に触れないため、デリケートな素材や精密部品の表面を傷つけることなく評価できるのです。
特にキーエンスのVRシリーズやミツトヨの非接触3次元測定機は、線ではなく面で粗さを捉える三次元評価を実現し、面全体の情報を取得可能にしました。
これにより、摩耗予測や液体のはじき具合など、製品機能に直結する評価が可能になります。
さらに、エビデント(旧オリンパス)のLEXTシリーズのようなレーザー顕微鏡は、高速かつ高精度な測定を実現します。
ナノレベルの精度が求められる半導体分野では、原子間力顕微鏡(AFM)も活用され、技術革新が評価の次元を引き上げています。
製図における面粗度の指示方法
面の指示記号の配置と記入例
図面上で面の状態を正確に指示するためには、JIS B 0031で定められた面の指示記号を適切な場所に配置することが不可欠です。
記号を置く位置は、対象となる面の輪郭線、寸法補助線、またはそれらの延長線上が基本となり、記号の頂点を面に接するように、または引出線で結んで指示します。
このとき、記号の向きは図面の下辺か右辺から見て正しく読めるように配置するという決まりがあるのです。
例えば、記号の横には算術平均粗さ「Ra 1.6」のようにパラメータと数値を記入し、上部には研削加工を示す「G」といった加工方法を記載します。
もし除去加工を許可しない面であれば、記号に丸印を追加したものを使い分ける必要があります。
さらに、カットオフ値や評価長さが必要な場合は、Raの数値の下に横線を引き、その下に「0.8-8」のように記入することになっています。
これらのルールを守ることで、設計者の意図が加工現場へ正確に伝わるでしょう。
ISO1302に基づく記入方法
図面で面粗度を指示する際は、国際規格であるISO 1302:2002に準拠した方法が広く採用されています。
これは日本のJIS B 0031:2003でも規定されており、グローバルなものづくりにおいて不可欠なルールといえるでしょう。
基本となる記号は山形で、その左側に「Ra 3.2」や「Rz 12.5」といったパラメータと数値を記入します。
記号の上部にはフライス加工を示す「M」や研削加工の「G」といった加工方法を記載し、右側には加工による筋目の方向(例:⊥は工具の送り方向に直角、Xは2方向に交差)を記述することが可能です。
また、山形記号に横棒を引くと「除去加工あり」、円を加えれば「除去加工なし」を意味する指示になります。
これらの記号を正しく配置し、必要な情報を漏れなく記入することで、設計者の意図を製造現場へ正確に伝えることができるのです。
加工法による面粗度の違い
各種加工法と面粗度の関係
製品の表面をどのように加工するかによって、得られる面粗度は大きく変わってきます。
例えば、旋盤やフライス盤を用いた一般的な切削加工では、算術平均粗さRaが3.2μmから12.5μm程度の仕上げとなるでしょう。
これは刃物で金属を削り取るため、微細な切削痕が残ることに起因します。
一方、砥石を用いて表面を微細に削り取る研削加工であれば、Ra0.2μmから1.6μmという格段に滑らかな面を得られます。
摺動部など、より高い精度が求められる場合には、ラップ仕上げやホーニングといった超仕上げ加工が選択肢にあがるはずです。
これらの方法ではRa0.1μm以下の鏡面に極めて近い表面を実現することも不可能ではありません。
このように、加工法と得られる面粗度には明確な相関関係が存在するため、設計段階で求める機能やコストに応じて最適な加工法を選定することが不可欠なのです。
加工法選択のポイント
加工法を選ぶ上で最も重要なのは、求める面粗度とコストのバランスを見極めることでしょう。
例えば、高い摺動性や気密性が求められる軸受やシール面には、Ra0.8以下の精密な仕上げが不可欠となります。
この場合、旋削やフライス削りといった一般的な切削加工だけでは不十分で、円筒研削やラップ仕上げといった後工程が選択肢に加わるでしょう。
一方で、外観品質が重視されない内部部品であれば、Ra6.3からRa12.5程度の切削仕上げで十分なケースも少なくありません。
必要以上に厳しい面粗度を図面に指定すると、特殊な工具や加工時間が必要となり、製品コストが大幅に跳ね上がってしまうのです。
部品が担う機能、例えば塗装の密着性を高めたい場合はRz25程度の粗さを残すなど、その役割を深く理解し、オーバースペックを避けることが賢明な選択と言えます。
面粗度に関するよくある質問
面粗度の数値はどのように決まるのか?
面粗度の数値は、単一の基準で決まるわけではありません。
最も重要な決定要因は、その部品に求められる「機能」と「性能」にあります。
例えば、エンジン内部のピストンのように高速で摺動する部分では、摩耗を抑え、気密性を保つためにRa 0.4といった非常に細かい面粗度が要求されるでしょう。
一方で、部品のカバーなど外観が重視される箇所では、見た目の美しさを基準に数値が決められることもあります。
また、加工方法とコストのバランスも極めて重要です。
研削加工やラップ仕上げを用いればRa 0.1以下の滑らかな面も実現可能ですが、それには高いコストがかかります。
そのため、設計者はJIS B 0601などの規格を参考にしつつ、製品に求められる性能を最低限満たせる、最も経済的な加工方法と面粗度の数値を総合的に判断して指定するのです。
つまり、機能、コスト、加工技術の三つの要素から最適な値が導き出されます。
表面粗さと製品性能の関係は?
表面粗さと製品性能は、切っても切れない密接な関係にあります。
例えば、エンジン内部のピストンやベアリングのような摺動部品では、表面が粗すぎると摩擦が増してしまい、摩耗や焼き付きの原因となりかねません。
反対に、潤滑油を保持するために意図的に特定の粗さが求められるケースも見られます。
また、Oリングでシールする接合面では、面の状態が気密性や液密性を直接左右するため、適切な仕上げが不可欠でしょう。
さらに、繰り返し荷重がかかるシャフトなどの部品において、表面の微細な凹凸は応力集中の起点となり、疲労強度を著しく低下させる要因にもなるのです。
このほか、塗装やめっきの仕上がりといった外観品質、さらには電気接点の接触抵抗など、表面粗さが影響を及ぼす範囲は多岐にわたります。
したがって、部品に求められる機能に応じて表面粗さを適切に管理することは、製品全体の信頼性を確保する上で極めて重要な工程といえるでしょう。
まとめ:面粗度と記号の基本を押さえて品質管理を極めよう
今回は、図面の読み方や加工精度の指示について学びたい方に向けて、
– 面粗度の基本的な定義と重要性
– 図面で使用される主な記号とその意味
– 正しい表記ルールと新旧規格の違い
上記について、解説してきました。
面粗度は単なる表面の凹凸を表すだけでなく、製品の寿命や性能を大きく左右する重要な要素だと言えます。
適切な記号を選んで図面に指示しなければ、思わぬ加工トラブルやコストの増加を招いてしまうかもしれません。
とはいえ、新旧の規格が混在していたり種類が多かったりと、最初は覚えることが多くて戸惑うことも多いでしょう。
まずは現場で頻繁に使われる代表的な記号から一つずつ確認し、実際の図面と照らし合わせてみてください。
難解な専門用語が多いこの分野について学ぼうとし、ここまで記事を読み進めた熱意は素晴らしいものです。
その日々の積み重ねは、必ずご自身のスキルアップや業務品質の向上につながっていると筆者は確信しています。
記号の意味が直感的に理解できるようになれば、設計者の意図がより深く読み取れるようになり、仕事がさらに円滑に進むに違いありません。
今日から手元の図面を改めて見直し、学んだ知識を少しずつ実務に活かしていきましょう。
あなたの技術者としてのさらなる成長と、より良いモノづくりへの貢献を心から応援しています。


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